年七十二万円の家賃が入るなら、物件はいくらで売れるのか。家賃を一定の率で割る計算を見かけますが、どの収益とどの率を使ったかで結果は大きく変わります。

収益還元の考え方を使うときは、家賃の総額と、費用を引いた純収益を分けることが先です。計算式に数字を入れる前に、収益の中身を確認しましょう。

直接還元法の基本を知る

収益還元法には、将来の収益を評価する複数の方法があります。その一つである直接還元法は、標準的な一期間の純収益を、それに対応する還元利回りで割って価格を試算する考え方です。

国土交通省の鑑定評価基準等では、収益や利回りの把握について考え方が示されています。ただし、簡単な割り算をしただけで、不動産鑑定士が行う個別の鑑定評価と同じになるわけではありません。

収益の定義をそろえて比較する

確認する数字区別すること
満室想定の家賃空室や未収、費用をまだ反映していない
運営純収益・NOI等どの管理運営費を控除したか確認する
評価に使う純収益資本的支出等の扱いも含めて定義する
還元利回り採用する収益と対応した率を使う

開示資料などで使うNOIと、鑑定評価で使う収益の内訳が必ず同一とは限りません。大きな更新工事等をどこで反映するかを確認し、家賃に対応する表面の率と純収益に対応する率を混ぜないようにします。

同じ純収益でも率によって価格は変わる

説明用に、計算に使う標準的な年間純収益を四十八万円と仮定します。この収益の定義に対応する還元利回りを仮に十二%と置くなら、四十八万円÷〇・一二=四百万円です。十六%と置くなら三百万円になります。

この二つの率は市場相場や推奨値ではありません。率が違うと結果がどう変わるかを示すだけの仮定です。借入金利をそのまま還元利回りに置き換えたり、欲しい価格になる率を後から選んだりしないでください。

家賃総額を使うと条件が変わる

同じ例で家賃総額が七十二万円だったとして、費用を反映せず十二%で割ると六百万円です。純収益四十八万円から計算した四百万円との差は二百万円になります。同じ率のまま収益の中身だけ変えると、比較の前提が崩れます。

家賃は地域の需要、現在の契約、募集状況で確かめます。初年度の空室や一時的な収入を、そのまま毎年続く標準的な収益にしないことも重要です。

売れる価格は他の材料でも確認する

戸建ては、投資家だけでなく自己居住を考える人が買主になることもあります。建物状態、道路や権利、土地の使い方、近隣の取引なども関係するため、収益計算だけで成約価格を保証できません。

仲介会社や鑑定士へ相談する際は、家賃資料、経費、修繕履歴を渡し、どの収益と率を使ったかを質問します。自分の概算と違う場合も、最初に定義を照合すると理由を探しやすくなります。

まず家賃年額と、年間費用を引いた収益を別々に書いてください。その上で計算の前提を示して相談することが、収益から価格を考える第一歩です。