家賃が返済額より大きいから大丈夫。その比較だけでは、管理費や税金などを払った後の返済余力が分かりません。DSCRは、返済前の収益・現金が元本と利息の支払に対してどの程度あるかを見る指標です。使う数字の範囲をそろえて計算しましょう。

聞き慣れない略語でも、考え方は難しくありません。ただし、数字が1を超えたから安全、一定値なら必ず融資される、と判断する道具ではありません。

返済前の数字を元利返済額で割る

内閣府の用語集では、DSCRを元利支払前キャッシュフローを元利支払予定額で割る指標としています。不動産の試算では、NOIを用いる形もあります。金融機関や資料によって費用や調整の範囲が違うため、同じ定義で比較することが大切です。

計算の欄この記事の簡易例で使う内容
分子賃料等から物件の運営費を引いたNOI
分母同じ年の借入元本返済+支払利息
別途確認大型設備投資、所得税等、預金残高

NOIには借入返済や減価償却を混ぜません。家賃満額をそのまま分子にしたり、利息だけを分母にしたりすると、返済余力を過大に見せてしまいます。

仮の戸建てで計算してみる

年間の賃料等収入72万円、運営費24万円、年間元利返済36万円と仮定します。NOIは72−24=48万円。簡易DSCRは48÷36=約1.33です。返済後は48−36=12万円ですが、大型設備投資や所得税等はまだ差し引いていません。

この計算は、各項目を同じ一年間でそろえた例です。初年度の入居が六か月だけなのに分子を満室十二か月分とし、分母を実際の六か月分だけにするなど、期間を混ぜないようにします。

空室や支出増を入れて再計算する

同じ物件で収入が12万円減り、運営費は24万円のままと仮定すると、NOIは36万円です。DSCRは36÷36=1.00となり、この範囲では返済後に残りません。さらに収入が6万円減るなら、NOI30万円、DSCRは約0.83で、返済額に対して年6万円不足します。

運営費は空室でも全てなくなるわけではありません。固定資産税や保険などを含め、減る費用と残る費用を区別します。金利上昇で返済額が変わる案も、返済予定表を基に別途試算しましょう。

1を超えても預金不足は起こり得る

年間では余裕があっても、家賃入金前に大きな工事代が必要なら、その月に現金が不足することがあります。修繕費をNOIへ含めた範囲と、大型設備投資等を別にした範囲を明記し、二重計上や計上漏れを防ぎます。

DSCRは税務上の所得や総合的な投資利益とも別です。借入のない物件では分母がゼロになるため、通常の比率として計算せず、物件収益と現金で確認します。金融機関の審査基準も一律ではなく、自己流の合格ラインを作らないようにしてください。

まず年間の収入、運営費、元本返済、利息を四行に分けてください。その定義を添えて通常時と空室時を計算し、最低預金残高と一緒に見ると、返済計画の弱いところを具体的に相談できます。