同じ百万円を投じて二十一万円の利益が出るなら、同じ成果なのでしょうか。一年で受け取る場合と二年後に受け取る場合では、お金を使えない期間も、途中で起き得ることも変わります。

投資を比較するときは、いくら残るかに加えて、いつ支払い、いつ受け取るかを並べます。難しい指標を使う前に、入出金の時系列を整えることが出発点です。

利益の総額と一年あたりの率を区別する

説明用に、最初に百万円を支払い、途中の入出金はなく、最後に百二十一万円を受け取る仮例を考えます。税金、手数料、借入、追加支出は含みません。百二十一万円には投資した百万円の回収も含まれます。

仮の案最後の受取額利益総額年あたりの複利換算
一年後に受け取る百二十一万円二十一万円二十一%
二年後に受け取る百二十一万円二十一万円十%

二年の例は、百万円×一・一×一・一=百二十一万円という関係です。二十一%を二で割る方法とは異なります。これは時間の違いを示す仮定で、その収益が実現するという話ではありません。

IRRは入出金の時期を含む指標

内部収益率と呼ばれるIRRは、各時点の入出金を考慮する指標です。国土交通省のファイナンス資料でも、投資と将来の現金を現在価値へ直したときに釣り合う割引率として説明されています。

上のように最初の支出と最後の受取だけなら、表の年あたりの率がIRRになります。実際の賃貸では、途中の家賃、修繕、売却等があるため、同じ単純式へ当てはめられません。

現在価値は比較の基準をそろえる考え方

将来のお金を、仮に決めた割引率で現在へ置き換えて比べるのが現在価値の考え方です。割引率を高く置くほど、先の受取額の現在価値は小さくなります。割引率は、将来の安全な運用収益を保証する数字ではありません。

国土交通省の現在価値化の資料も、入出金へ時間の概念を加えて説明しています。公的資料に出る特定の率を、自分の空き家投資へそのまま推奨値として使わないようにします。

先に現金表の範囲を決める

借入を除いた物件全体で見るのか、借入と返済を含めた自己資金から見るのかを明記します。途中で元本返済や残債だけを混ぜると、指標の意味が変わってしまいます。家賃も満室想定と実入金を混同しません。

日付、収入、支出、根拠資料を一行ずつ並べます。初期工事を取得費に含めたなら、同じ金額を保有中の修繕へ重ねないようにします。売却価格は、実績か予測かを分けて表示します。

高い率だけで判断しない

投資額が小さく、短期間の見込みが良ければ高い率が出る場合があります。それだけで、金額として十分な利益が残るとは限りません。売却が遅れる、修繕が増える、家賃が途絶える条件も計算します。

入出金の符号が何度も変わる等の形では、IRRが一つに定まらないなどの問題もあります。計算ソフトの数字をそのまま結論にせず、利益総額、年ごとの最低残高、未確定事項と並べます。

まず一軒分の入出金を時系列へ整理してください。現在価値やIRRは、足りない資料を埋める魔法ではなく、そろえた数字を別の角度から確かめる道具として使えます。