賃貸中の物件を売買するときは、契約書を渡すだけでなく、誰が何月分の家賃を受け、敷金をいくら引き継ぐかを決めます。売主と買主の精算、入居者への通知、管理会社の処理を同じ条件へそろえましょう。

権利の承継とお金の移動を分ける

民法には、不動産の譲渡に伴う賃貸人の地位や敷金返還債務等の承継について規定があります。適用条件や例外があるため、今回の売買と賃貸借の関係を専門家へ確認します。売主と買主の間で現金を渡したかだけで、入居者に対する権利義務を判断しないようにします。

特に敷金は、入居者へ新たに二重に払ってもらう話と混同しません。契約別の受領記録と現在の残高を確認し、売買の精算方法へ反映します。

精算表は費目別に作る

費目確認する内容
家賃等対象月、入金先、売主と買主の配分
未収金対象期間、回収担当、権利の扱い
敷金等契約別残高、返還義務と引継ぎ方法
管理費等控除済みか、別請求か、対象期間
進行中の修繕発注者、支払者、入居者への約束

同じ入金を家賃と敷金の両方へ計上したり、管理会社が控除した費用を再び引いたりしないようにします。未確定項目には、確認先と精算予定日を記載します。

日割りは合意した基準で計算する

仮に月額家賃6万円、30日ある月の16日から買主分とする合意で、月額全額を売主が受領済みなら、買主分は6万円×15日÷30日=3万円です。これは計算例で、全国共通の精算方法という意味ではありません。

引渡日をどちらに含めるか、実日数か別の基準か、端数処理、共益費等の扱いを確認します。支払日と対象月は違うため、前月に受け取った翌月分も漏れなく確認しましょう。

敷金は売買代金の精算方法まで追う

敷金を現金で引き渡すのか、売買代金等との相殺で処理するのかを決済資料で確認します。相殺なら、買主が現金を受け取っていなくても、価格精算にどう反映されたかを記録します。

退去手続中や控除に争いがある契約は、残高だけでは足りません。経緯、未合意の点、返還予定を引き継ぎます。入居者に対して未確認の控除を確定済みとして説明しないようにします。

入居者には変更点を一つの通知で伝える

新しい貸主、変更日、家賃の支払先、修繕窓口、問い合わせ先を明確にします。振込先変更は詐欺と区別できるよう、旧窓口にも確認できる正式な方法で案内します。売主、買主、管理会社から矛盾した通知を出さないよう、事前に内容を照合します。

自動引落しや保証会社の手続がある場合は、切替えが間に合うか確認します。旧口座へ誤って入ったお金をどう移すか、誰が入居者へ連絡するかも決めます。入居者へ二重払いを求める前に、入金を関係者で確認しましょう。

切替後の最初の月を照合する

決済日に終わったと思わず、最初の管理報告で家賃、控除、送金、敷金残高を確認します。引渡し前に依頼された修繕や問い合わせが止まっていないかも見ます。

まず引渡月と翌月の入金予定を、旧窓口と新窓口で並べてください。家賃の対象月、敷金残高、通知内容の三つが一致すれば、所有者変更後も入居者の暮らしと管理をつなぎやすくなります。