入居中の戸建てを売るときは、家の状態に加え、賃貸契約と実際の入金、修繕の履歴を整理します。買い手が確認したい情報と、入居者への連絡を分けて準備すると、売却の相談を進めやすくなります。
家賃が入っているのだから、利回りだけ示せば伝わる。そう考えがちですが、買い手は「その家賃がどの条件で続いているか」「修理の約束が残っていないか」も知りたいものです。数字の裏付けになる資料をそろえましょう。
最初に、契約と実際の運用を照合する
賃貸借契約書、更新や変更の書面、設備一覧、敷金などの記録を集めます。家賃を変更したのに古い契約書しかない場合などは、経緯と合意を確認します。口頭の約束があるなら、内容と相手を記録して仲介会社へ伝えます。
普通借家か定期借家か、どの期間の契約かも確認します。新しい所有者が、その家をすぐ自由に使えると考えると行き違いになります。入居者がいる状態で何を引き継ぐ取引なのか、資料に沿って説明することが必要です。
家賃一覧は「契約額」と「入金」を分ける
| 項目 | 準備する情報 |
|---|---|
| 契約上の賃料 | 家賃、別途費用、改定の履歴 |
| 入金状況 | 対象月、入金日、未収の有無 |
| 預かり金 | 敷金等の金額、精算に関する条件 |
| 管理 | 委託先、業務、料金、契約期間 |
| 保証 | 契約書、所有者変更時の確認先 |
契約額を12倍した数字と、実際に受け取った年間額は、同じとは限りません。家賃の無料期間や支払いの遅れがあれば、区別して説明します。資料の対象期間も明記してください。
修繕の資料は、未完了のものから整理する
修理済みの請求書だけでなく、入居者から相談を受けていること、業者の調査待ち、交換を約束した設備などを書き出します。「売るから、あとは次の人へ」と曖昧にせず、売主と買主のどちらが何を行うかを調整します。
工事履歴には実施日、箇所、内容、施工会社、保証の資料を添えます。雨漏りなどがあった場合も、見える跡だけでなく、把握している経緯と対応を説明します。分からない原因まで推測で埋める必要はありません。
建物の評価が上がる資料だけ集めると、後から説明不足になりかねません。未確認と未対応を区別し、確認の担当を決めることが大切です。
内覧は、入居者の生活に合わせて調整する
所有者だからと、売却目的で自由に室内へ入れるわけではありません。仲介会社や管理会社と、賃貸契約や状況に応じた連絡・承諾の手順を確認します。希望日時だけでなく、所要時間、人数、見る範囲を整理して相談します。
室内写真には、入居者の持ち物や個人情報が写ることがあります。撮影と広告掲載を同じ承諾だと考えず、それぞれ確認してください。過去の空室写真を使う場合も、現在の状態と異なる点を隠さないようにします。
決済前に、精算と連絡の一覧をつくる
家賃、敷金、管理委託、保証契約などについて、何を引き継ぎ、誰がいつ手続きするかを一覧にします。国土交通省の原状回復ガイドラインQ&Aにも、家主が交代した場合の敷金の返還に関する説明があります。預かり金を売主の収益と混ぜないことが大切です。
ただし、所有者が変われば、管理や保証の契約も何もせず引き継がれるとは限りません。各契約先へ手続きを確認します。家賃振込先が変わる場合は、正式な案内の時期と方法を関係者でそろえ、入居者が真偽を確認できる窓口も示します。
- 変更前後の窓口と、切り替わる日。
- 家賃の対象月と、送金・精算の区分。
- 修繕相談の引継ぎ先と、未完了の対応。
- 鍵や契約資料を渡す方法と、受領の記録。
まずは資料の「ないものリスト」から
すべてがそろうまで売却相談を待つ必要はありません。ある資料と、探す必要がある資料を分け、仲介会社へ伝えます。個人情報を含む書類は、検討の段階に応じて、必要な相手へ必要な範囲で共有しましょう。
入居中の売却準備は、買い手のためだけではありません。家賃の振込先や修理の窓口が急に分からなくなることを防ぎ、入居者の生活を続けるための準備でもあります。契約、入金、修繕の三つから整理してみてください。
