利回りを物件同士で比べるなら、分母に何を含めたかをそろえましょう。購入価格だけの数字と、取得諸費用や改修費を含む数字は、そのまま比較できません。空き家では、買ってから貸し出せる状態にするまでの費用が判断を変えます。

安い物件ほど、購入後の費用を忘れない

売出価格が手頃だと、家賃を価格で割って検討したくなります。しかし、給排水の補修や残置物の処理に費用がかかれば、当初の数字とは変わります。費用が未確定だからゼロにするのではなく、見積り待ちの項目として残します。

ここでは比較用の「総投資額」を、購入価格、取得に伴う諸費用、貸出開始までに必要な改修等の支出の合計と定義します。税務上の取得価額と同じ意味ではありません。予備資金は別欄に置き、どこまで含めた数字かを必ず書きます。

同じ年間家賃で二つの計算をする

以下は計算方法を示す仮定です。購入価格300万円、取得諸費用40万円、初期改修費110万円、月額家賃5万円とします。諸費用40万円は、この例で見込んだ取得関連支出の合計であり、一般的な相場を示すものではありません。

計算結果
年間想定家賃5万円×12か月=60万円
購入価格のみを分母にする60万円÷300万円=20%
総投資額を分母にする60万円÷450万円=約13.3%

どちらも満室想定の家賃を使い、運営費、空室、借入返済、税金を差し引く前の数字です。総投資額を使っただけで、手残りを表す利回りになるわけではありません。数字の名称より、分子と分母の中身を見ましょう。

費用は確定・見積り・未確認に分ける

比較表には、各支出の金額、根拠資料、確認日、確度を記入します。例えば工事見積りに廃材処分が含まれているなら、別欄で再度足して二重計上しないようにします。税金や登記等も、必要な範囲を専門家へ確認して見込みます。

  • 確定:契約や請求書で金額と範囲を確認した。
  • 見積り:条件が変わると金額も変わる。
  • 未確認:調査や専門家への質問が必要。

未確認費用が残る段階では、総投資額を一点に決めず、追加費用を含む場合も計算します。先ほどの例で初期改修費が40万円増えると、総投資額490万円に対して約12.2%です。何が増える可能性かも横に書きます。

借入額を引いて分母を小さくしない

物件そのものを比べる総投資額と、自分が出した現金は分けます。借入を使ったから物件の必要費用が減るわけではありません。自己資金に対する手残りを別途計算するときは、返済や追加出資を含む別の指標として扱います。

予備資金も、使っていなければこの例の投資済み額には入れませんが、不要なお金ではありません。総投資額とは別に、購入後も手元へ残す資金を示すと、利回りだけを良く見せる判断を避けやすくなります。

最後に運営後の数字へ進む

総投資額がそろったら、空室、管理費、保険、税負担、修繕などを別に見込みます。国税庁が示す不動産所得の計算と、投資比較用の現金収支は目的が異なります。利回り表をそのまま申告用の計算に使わないようにしましょう。

まず検討中の一物件で、購入価格以外の支出をすべて一列に並べてください。未確認項目が見つかったら、次に聞く相手を書きます。分母を丁寧に作ることが、購入判断の精度を上げる一歩です。