「100万円の空き家なら、100万円あれば始められる」。物件を探し始めた頃は、そう思いやすいものです。けれども、購入できることと、貸し出せる状態にして運営を始められることは違います。
初期費用は、物件価格に、取得諸費用、修繕・片付け、募集準備を加えて考えます。さらに、空室や故障に備える資金を残します。全国共通の必要額はありません。物件の状態や契約条件によって変わるため、見積もりを集めて積み上げるのが確実です。
まず、お金を5つに分ける
| 区分 | 主な内容 | 確認相手 |
|---|---|---|
| 物件代金 | 土地・建物の購入代金 | 仲介会社・売主 |
| 取得諸費用 | 仲介、登記、税、契約関係、精算金等 | 仲介会社・司法書士・自治体等 |
| 貸せる状態にする費用 | 調査、残置物処分、修繕、清掃 | 調査・工事・処分業者 |
| 募集・保有の準備 | 保険、募集関係、工事中の光熱費等 | 管理会社・保険会社等 |
| 予備資金 | 空室中の支出、追加工事、設備故障への備え | 自分の資金計画で設定 |
同じ費用を二重に入れないよう、項目と含まれる範囲をそろえます。「諸費用一式」としか分からないものは、内訳を確認しましょう。消費税込みか、別途費用があるかも重要です。
100万円で買う家の、説明用の試算
次は仕組みを理解するための仮定です。相場、実績、実際の見積もりではありません。現金購入とし、借入手数料や利息は含めていません。
| 項目 | 仮定額 |
|---|---|
| 物件価格 | 100万円 |
| 取得諸費用 | 45万円 |
| 調査・片付け・修繕・清掃 | 135万円 |
| 保険・募集準備・工事中の費用 | 20万円 |
| 予定支出の合計 | 300万円 |
| 別に残す予備資金 | 50万円 |
| 用意する資金 | 350万円 |
購入価格は100万円でも、この設定では350万円を用意します。50万円の予備資金は、すでに使った費用ではありません。「支出した金額」と「手元に確保する金額」を分けると、後で利回りを計算するときも混乱しにくくなります。
なお、50万円あれば十分という意味ではありません。予備資金は、空室中の固定支出、返済の有無、交換が近い設備、ほかの手元資金を踏まえて設定します。所得税等は、この初期費用例に含めていません。
安い物件ほど、仲介手数料の割合を確認する
物件価格が低いと、諸費用の割合が大きくなります。国土交通省の案内では、800万円以下の宅地建物について、仲介に要する費用を勘案した特例があり、依頼者の一方から受ける仲介手数料の上限は税込33万円です。使用状態は問わないとされています。
これは、すべての取引で33万円に決まるという意味ではありません。依頼時に金額と条件を確認し、合意しておくことが大切です。「物件が安いから手数料もわずかだろう」と見込まず、資金表に実額を入れましょう。
修繕費は「きれいにする工事」から決めない
内装に目が向くのは自然なことです。ただ、屋根や給排水などに必要な工事があれば、先に把握しておきたいところです。工事業者には、貸す予定であること、想定する家賃、優先したい修繕を伝えます。
見積もりでは、施工範囲、数量、材料、撤去処分費、追加になり得る箇所を確認します。比較するときも、同じ範囲の工事を比べます。DIYをする場合も、材料代、道具代、処分費、作業中の保有費用はなくなりません。自分の時間も含めて続けられる方法を選びましょう。
総額に加えて、いつ支払うかを見る
資金計画で困るのは、総額の不足だけではありません。入金より先に支払いが来ることでも困ります。手付金、決済時の残代金、工事の着手金や完了金、税金など、支払時期を一覧にします。
借入れを使うなら、何に融資を使えるか、実行日はいつか、自己資金で先に支払う部分があるかを金融機関へ確認します。融資予定を、審査や契約が済む前から確定した入金として扱わないでください。借入れの費用も資金表へ追加します。
予算を超えたら、削る順番を間違えない
見積もりが想定を超えたときは、まず購入価格、工事の仕様、募集条件を見直します。安全性や生活に必要な設備まで削って帳尻を合わせるのは避けたいところです。装飾的な工事を後に回せないか、既存の設備を点検して使えるか、業者と相談します。
それでも資金が足りなければ、今回は見送るという判断もできます。借りられる限度額をそのまま使う金額にせず、購入後も運営を続けられる範囲を決めること。初期費用を調べる目的は、最安値を探すことだけでなく、自分の予算で扱える物件を見つけることです。
購入前に聞いておきたい3つの質問
- この見積もりに含まれていない費用は、何ですか。
- 現地調査後や工事中に、追加になる可能性はどこですか。
- 入居まで数か月延びた場合、毎月いくら支出しますか。
空き家投資の入口を考えるなら、物件代金だけを貯めるより、候補物件1件について資金表を作ってみると理解が進みます。購入、修繕、募集まで支払い、まだ手元に資金が残るか。この確認ができてから、買える金額を決めていきましょう。
