「利回り30%」と書かれた物件を見ると、魅力を感じますよね。けれども、同じ家賃でも、修繕費や税金、空室の扱いが違えば、手元に残る金額は変わります。
表面利回りは、家賃収入と物件価格の関係を見る数字です。実質利回りは、費用も含めて収益性を見るための数字です。ただし、実質利回りに何を含めるかは資料によって異なります。名前だけを信じず、計算式を確かめましょう。
表面利回りは、最初の比較に使う
一般に、表面利回りは「年間家賃収入÷物件価格×100」で計算します。空室の物件では、想定家賃を12か月分にした数字が使われることもあります。実際の入金なのか、満室を仮定した数字なのかを確認してください。
説明用の仮定として、物件価格200万円、月額家賃6万円の戸建てを考えます。12か月入居した場合の家賃は72万円。表面利回りは72万円÷200万円×100=36%です。実在する物件の実績でも、達成できる利回りの約束でもありません。
この段階では、取得諸費用もリフォーム費用も引いていません。「36%だから、数年で確実に回収できる」とは言えないのです。
実質利回りは、費用の範囲をそろえて計算する
ここでは、次の式を使います。
年間の家賃収入から運営支出を引いた額÷取得・改修にかかった総額×100
比較しやすくするため、この計算では借入れの元利返済、所得税等、減価償却を含めません。大規模修繕の将来積立も、後で別に確認します。売却時の代金・費用・税金も含まない、1年間の運営を見るための指標です。
| 説明用の前提 | 金額 |
|---|---|
| 物件価格 | 200万円 |
| 取得諸費用 | 50万円 |
| 初期改修費 | 150万円 |
| 取得・改修の総額 | 400万円 |
| 満室時の年間家賃 | 72万円 |
| 年間運営支出 | 18万円 |
運営支出18万円は、固定資産税等、保険、管理、小修繕などをまとめた仮定です。実際は項目ごとに見積もります。この条件なら、実質利回りは(72万円-18万円)÷400万円×100=13.5%。表面利回り36%と、見え方がかなり変わります。
空室が出た場合は、同じ式に入れ直す
次に、2か月分の家賃が入らないケースを考えます。家賃収入は60万円です。比較を単純にするため運営支出は18万円で据え置くと、(60万円-18万円)÷400万円×100=10.5%になります。
実際には空室によって一部の管理費が減ることもあれば、募集費や退去後の修繕費が増えることもあります。したがって、この10.5%も将来予測ではありません。まず空室の影響を見て、その後に発生する支出を加えて計算し直します。
「満室なら成り立つ」から一歩進んで、家賃が下がる、修繕が増える、入居が遅れる、と条件を変えてください。数字の変化を見ると、どこに余裕があり、どこが弱いかが見えてきます。
実質利回りと、返済後の手残りは別
借入れがある場合、ここまでの数字だけでは資金繰りを判断できません。先ほどの空室ケースでは、運営支出後の金額は42万円です。さらに年間の元利返済を24万円と仮定すれば、返済後は18万円になります。
この18万円には、所得税等や臨時の大きな修繕を反映していません。そのまま生活費に使える金額と考えず、将来の支出にいくら残すかまで確認します。利回りが高くても、返済期間が短いなどの条件で、現金の余裕が小さくなることはあります。
税金の計算と、現金の計算も分ける
国税庁は、不動産所得を「総収入金額-必要経費」で計算すると案内しています。必要経費の例には、固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費などがあります。
ここで注意したいのが、減価償却費は、その年に同額の現金を支払う項目ではないことです。反対に、借入れの元本返済は現金が出ていきますが、利息と同じように必要経費へ入れるものではありません。税務上の所得と口座残高の増減は一致しないため、税務計算は別表にして整理すると分かりやすくなります。
比較するときは、数字の名称より計算条件をそろえる
A物件が取得諸費用込み、B物件が物件価格だけなら、表示された実質利回りを横に並べても公平な比較にはなりません。家賃、空室、取得諸費用、改修費、運営支出の欄を同じ順番で作り、元の数字から計算し直します。分からない欄はゼロ円ではなく「未確認」と記入してください。小さな作業ですが、買う前に不足情報を見つける役にも立ちます。
物件資料を見たら、この5点を確認する
- 家賃は実績か、想定か。空室を反映しているか。
- 分母は物件価格だけか、諸費用と改修費も含むか。
- 支出に税金、保険、管理、修繕をどこまで入れたか。
- 借入返済後に、現金はいくら残るか。
- 空室や追加修繕が起きても、手元資金で対応できるか。
高い利回りを目指すのは、運営に余裕を持たせるための一つの考え方です。ただ、その数字だけで安全は決まりません。需要や建物の状態も確かめ、同じ前提で計算する。これができると、広告の大きな数字に振り回されず、物件を比較しやすくなります。
