現金購入と借入の比較では、「購入後にいくら残るか」と「毎年どれだけ返済するか」を並べて見ます。借金がないことにも、手元資金を残すことにも意味があります。どちらかを一律に正解とせず、修繕と空室への備えまで確認しましょう。

現金で買えば、返済に追われずに済む。借入を使えば、現金を残せる。どちらの考えも分かります。ただ、買える金額だけを見て選ぶと、購入後の運営を見落としやすくなります。

比較は、同じ物件と同じ費用で行う

片方だけ工事費を含めたり、借入手数料を省いたりすると、比較がずれます。物件価格、取得諸費用、初期工事、融資にかかる費用を分けて書きます。

借入を利用できるかどうかは、金融機関の審査や物件条件によります。希望する額と期間で必ず借りられる前提では進めません。実際の条件を確認してから表を更新してください。

生活費や別事業に必要なお金は、物件の購入資金に含めず、先に取り分けます。

総投資400万円の仮例で見る

使途の決まっていない資金500万円、物件と諸費用・工事を合わせて400万円と仮定します。借入案は300万円、年3%、10年、毎月の元利均等返済、ボーナス返済なしとします。金利は期間中一定、融資手数料等はこの表から除外します。

項目現金購入借入を利用
最初に使う現金400万円100万円
購入後の現金100万円400万円
毎月返済なし約2万8,968円
年間返済なし約34万7,619円

月額と年額は、それぞれ丸める前の計算値から表示しています。表示した月額の12倍と年額に、端数の差が出る場合があります。

借入案の残高が大きいのは、利益が増えたからではありません。借金が残っている状態です。実際には融資関連費用も差し引きます。

毎年の手残りも比べる

年間家賃72万円、年間の運営支出24万円と仮定すると、返済前の現金収支は48万円です。現金購入なら返済はなく、借入案では年間返済を差し引き、約13万2,381円になります。

この数字は所得税等、将来の追加修繕、別途の予備資金確保を考慮する前です。物件の収益性を予測するものではなく、資金調達による違いを示す計算です。

借入案では、手元資金を多く残せる一方で毎年の支払義務があります。現金案では、返済はないものの購入直後の現金が少なくなります。この交換関係を確認します。

悪い条件が重なった場合をつくる

空室と設備交換が同じ時期に来たらどうなるか。借入案では、さらに金利条件が変わった場合も確認します。

  • 家賃が数か月入らなくても、支払いを続けられるか。
  • 予定外の工事に使える資金は、別に確保できるか。
  • 他の借入や生活支出と重なっても対応できるか。

現金購入だから損をしないわけではなく、借入があるから直ちに危険というわけでもありません。資金の残り方と支出の大きさを、同じ条件で見ます。

借入条件は、金利以外も確認する

返済期間、返済方法、担保、保証、手数料、繰上返済の条件などを確認します。毎月の返済を軽くするために期間を延ばせば、総支払利息が変わるため、月額だけで判断しません。

住宅金融支援機構の資料でも、返済方法による月額と総返済額の違いが説明されています。ただし住宅向け商品の説明を、投資用物件への融資条件としてそのまま当てはめないでください。

金融機関には、修繕や空室も入れた計画を示し、返済予定表を確認しましょう。

購入後に残す額を先に決める

現金か借入かを選ぶ前に、生活用と物件運営用に残したい金額を整理します。その金額を守ったうえで、選べる購入条件を考えてください。

借りられる上限と、無理なく返せる額は別です。現金で払える額と、使ってよい額も別です。購入後の数字まで見える表をつくり、自分が管理し続けられる方法を選びましょう。