退去後の工事見積もりを、そのまま敷金精算書として送っていませんか。工事にかかる総額と、借主に負担を求める金額は一致するとは限りません。敷金から何を差し引き、いくら返すかを追える形にしましょう。

明細は請求のためだけの資料ではありません。お互いが計算と根拠を確かめ、分からない点を絞って話し合うための資料です。

最初に預り額と精算対象をそろえる

契約書、敷金の受領記録、家賃台帳、退去時の確認資料を照合します。途中で貸主が変わった物件は、引継いだ敷金額も確認します。礼金や保証会社へ払った保証料を、大家が預かっている敷金へ勝手に含めません。

欄示す内容
預り額根拠となる契約・受領記録
未精算の賃料等対象月、金額、入金確認
原状回復の負担場所、状態、算定根拠、借主分
その他の精算契約上の根拠と内訳
返還・追加支払差引計算、予定日、確認窓口

未確定の項目は確定額と分け、何がいつ分かる予定かを説明します。費用が未確定だからと、内訳を何も伝えず放置しないことが大切です。

工事見積もりから借主分を抜き出す

設備更新や経年劣化の補修まで、工事全体を一律に借主へ負担させる計算にはしません。状態、原因、経過年数、補修範囲、特約等を確認し、適切な借主負担を検討します。国土交通省のガイドラインには、精算明細の様式例もあります。

明細では「洋室の壁紙一式」だけでなく、どの面のどの状態を対象とし、どの範囲と割合で計算したかを書きます。合意できていない箇所を、立会い済みだから全て承認されたと扱わないようにします。

差引計算を一行で追えるようにする

説明用の仮定で、預り敷金12万円、確認済みの未払家賃2万円、妥当性を確認した借主負担の修繕費3万円なら、返還額は12−2−3=7万円です。工事総額が8万円でも、その8万円をもう一度引くことはしません。

数字は負担基準や相場を示すものではありません。実際は個別の契約と状態を確認します。借主が修繕費等を既に別に支払った場合は、二重控除をしないよう台帳と突き合わせます。

敷金を超える請求が生じる場合も、超えたこと自体が請求の根拠になるわけではありません。どの債務かを説明し、質問や協議の窓口を明記します。

返還と説明の記録まで残す

返金先は本人の既知の窓口で確認し、口座情報を不必要に広く共有しません。返還日、金額、手数料の扱いを確かめ、実行後に控えを残します。書類を送ったことと、返金したことも別の記録です。

国土交通省は、敷金から差し引く原状回復費用の明細について説明を求められることを案内しています。分からないという返答には、契約と写真、計算のどこが疑問かを聞き、説明を補います。返答がないだけで全ての条件に合意したと決めないようにしましょう。

まず精算書の各控除へ「根拠資料」の欄を一つ追加してください。金額と資料がつながれば、担当者が替わっても同じ説明ができ、不要な行き違いを減らせます。