減価償却費があるから、将来の修繕資金も用意できている。そう考えていませんか。減価償却は取得費を各年へ配分する税務・会計上の処理であり、預金を増やす仕組みではありません。利益の表と、現金の表を分けて確認しましょう。

帳簿に費用が載っているのに、今年はその金額を払っていない。初めて申告資料を見ると戸惑うところです。購入時の支払と、毎年の費用計上の時期が違うと考えると整理できます。

購入時の支出と各年の費用を区別する

建物などの減価償却資産は、原則として取得額を使用期間に応じて各年の必要経費へ配分します。一方、土地は減価償却の対象ではありません。土地と建物をまとめた購入額を、そのまま全額償却するわけではないことに注意してください。

中古戸建てでも、全て同じ年数で償却できるとは限りません。構造、築年数、資産の区分、取得後の工事などを確認します。申告に使う年数や金額は、資料をそろえて判断する必要があります。

現金と利益を同じ表で見比べる

以下は違いを理解するための仮定です。年間家賃72万円を全額受け取り、現金で払った経費が20万円、減価償却費が24万円だったとします。借入、所得税等、追加設備投資、未収・未払はないものとします。

見る数字計算結果
当年の現金増加72万円−20万円52万円
所得計算の例72万円−20万円−24万円28万円
差額52万円−28万円24万円

差額24万円は、どこかから新しく入金されたお金ではありません。過去に取得した資産の費用配分が、当年の現金支出と一致しないために生じた差です。実際の現金残高は、購入資金や借入返済、税金なども含めて確認します。

償却が終わっても建物の支出は終わらない

減価償却費が減ると、他の条件が同じなら所得が増える可能性があります。一方で、古くなった設備の交換や建物の維持費は必要です。償却の終了と、修繕の終了を同じものと考えないことが大切です。

また、帳簿上の価額が小さくなったからといって、実際に売れる価格が同じように下がるとは限りません。税務上の価額、売却査定、修繕予算は、それぞれ目的の違う数字です。

修繕資金は現金として確保する

修繕の予定額と実施時期を見て、預金のうちいくらを使わずに残すか決めます。減価償却費と同額を機械的に積み立てるのではなく、設備の状態、空室時の支出、納税予定も一緒に考えます。

まず今年の収支資料に「現金支出を伴わない減価償却費」の欄を設けてください。次に銀行残高から税金や予定工事に必要なお金を分け、自由に使える現金を確認しましょう。帳簿の利益を理解しながら、支払える状態を保つことが目的です。