購入価格の上限は、売出価格への値引き希望だけで決めず、見込める家賃と必要費用から逆算する方法があります。まず物件全体にかけられる額を出し、工事や諸費用を引きましょう。逆算結果は自分の条件に合う価格であり、その価格で買える保証ではありません。

目標に使う収益の定義を決める

満室家賃を使うのか、空室と運営費を考慮した額を使うのかで結果が大きく変わります。ここでは、想定家賃から空室による収入減と年間運営費を引いた額を、借入返済と所得税等の前の収益として使います。

目標利回りも同じ定義にそろえます。自己資金に対する返済後の利回りと、総投資額に対する返済前の数字を混ぜないようにします。高い目標値を入れれば安全になるわけではなく、家賃と費用の根拠が先です。

総投資額から価格を逆算する

仮に年間満室家賃72万円、空室等の収入減6万円、運営費18万円とします。運営費にはこの例で見込む管理、保険、固定資産税、通常の維持費を含み、元利返済、所得税等、臨時の大規模工事は除きます。差引収益は48万円です。

項目仮定計算
目標利回り返済・所得税等の前で10%
総投資額の上限48万円÷0.10=480万円
初期工事費120万円
取得諸費用40万円
購入価格の目安上限480−120−40=320万円

すべて説明用の仮定です。取得諸費用は価格によって変わるものもあるため、実際には価格案ごとに見積り直します。税務上の取得価額を計算した表でもありません。

未確定費用は幅を持たせる

初期工事が120万円ではなく160万円必要なら、他の条件が同じ場合、購入価格の目安上限は280万円です。未確認の傷みをゼロ円にして計算すると、価格上限を高く見過ぎるおそれがあります。

工事見積りの範囲、処分費、諸費用を確認し、未確定部分を別欄にします。購入後も残す修繕・空室用の現金は、投資済み額と区別しながら、必要な自己資金の計算へ入れます。

家賃が下がる場合も計算する

仮に差引収益が48万円から42万円へ減るなら、目標10%での総投資額は420万円です。初期工事120万円、諸費用40万円の仮定なら価格目安は260万円になります。家賃見込みの小さな違いが、購入判断へ影響することが分かります。

希望家賃を上げて買える価格へ合わせるのではなく、仲介会社の回答や比較物件から収益見込みを作ります。目標家賃と確認できた根拠は別に記録しましょう。

返済後の資金繰りを別に確認する

この計算で目標を満たしても、借入期間が短ければ毎月の返済負担が大きくなる場合があります。金融機関から確認した条件を使い、返済後の現金と最低残高を別に計算します。将来の大きな修繕も、目標利回りだけでは賄えません。

売主の希望価格が上限を超える場合は、条件交渉、計画の見直し、見送りを検討します。上限は相手へ押し付ける正しい価格ではなく、自分が無理なく進めるための判断材料です。

買付前に前提を一枚へまとめる

まず家賃、空室見込み、運営費、初期工事、諸費用を書き出します。次に目標利回りの定義を明記し、価格上限を出してください。根拠の弱い項目が見つかったら、交渉の前に追加確認を進めましょう。