一軒を貸し出せた後、「何となくうまくいった」で終わらせるのはもったいないことです。逆に、費用が増えたからすべて失敗と決める必要もありません。買う前に何を根拠に判断し、実際にはどこが違ったかを残すと、次の一軒で確認すべきことが見えてきます。
ここでは、年間収支を集計する作業から一歩戻り、購入時の判断そのものを見直すノートを作ります。
購入時のメモを、そのまま残す
当時の家賃予測、工事見積もり、募集開始予定、気にしていた問題、購入を決めた理由を集めます。後から分かったことを、最初から知っていたように書き換えないことが大切です。
当時の記録がない項目は「記録なし」とします。記憶で数字を埋めると、都合のよい振り返りになりやすいためです。今後は買付前の判断メモを日付付きで保存する、と次の行動へつなげます。
予測と実際を、同じ範囲で並べる
| 項目 | 購入前 | 実際に確認するもの |
|---|---|---|
| 家賃 | 想定額と根拠 | 契約額、条件、募集経過 |
| 工事 | 見積範囲と未確認箇所 | 発注・追加・請求の記録 |
| 期間 | 貸し出し開始の予定 | 工事完了と入居開始 |
| 管理 | 必要時間と外注の想定 | 訪問・連絡・委託の実績 |
見積額が税別、請求額が税込なら、そのまま差額を出しません。自分で追加した設備も、当初の必須工事とは分けます。同じ仕事の範囲で比べて初めて、予測のどこがずれたかが分かります。
ずれの理由を三つに分ける
一つ目は、購入前に調べられたのに調べなかったこと。二つ目は、調べても当時は分からなかったこと。三つ目は、購入後に自分で条件を変えたことです。すべてを「見込み違い」とまとめず、記録に沿って分けます。
例えば、追加工事が発生しても、内覧で見えなかった下地の傷みと、購入後に選んだ高価な仕上げでは意味が違います。業者へ確認した内容、未確認と説明された範囲、変更を決めた日をたどります。担当者の責任を決めるためではなく、次の見積条件を改善するためです。
うまくいった結果も、根拠を確かめる
予想より早く入居が決まったとしても、その地域なら毎回同じ期間で貸せるとは限りません。募集時期、家賃、設備、問い合わせの内容などを残し、どの要素が影響したかを仮説として考えます。
国土交通省が提供する取引価格情報も、取得時の地域比較を振り返る材料になります。ただし、売買価格の情報だけで賃貸需要まで確認できるわけではありません。家賃の根拠は、当時の募集資料や仲介会社とのやり取りなど、目的に合う情報へ戻って確かめましょう。
次の購入条件へ、一つずつ反映する
「今度は気を付ける」だけでは行動が変わりません。「床下を確認できない場合は、調査費と予備費の扱いを決めてから買付する」「工事期間には見積回答待ちも入れる」など、条件と行動をセットにします。必要な余裕は物件ごとに見直してください。
条件を増やしすぎて、どの物件も検討できなくなる場合は、必須条件と追加調査で判断する条件を分けます。一件の経験を、すべての地域や建物に当てはめないことも大切です。
最初は、一件の三項目だけでよい
まず家賃、工事費、期間の三つについて、予測、実際、違った理由、次に変えることを書きます。関係資料への参照も残せば、記憶が薄れても確認できます。
経験を増やすだけでなく、経験から確認方法を変える。その積み重ねが、次の購入判断の材料になります。今の一軒の記録を開き、予想と違ったことを一つ書くところから始めましょう。
