空き家の内覧では、古い壁紙や床の傷が目につきます。「これなら直せそう」と感じることもあるでしょう。しかし、購入後の負担を大きくするのは、見た目よりも、まだ確認できていない問題かもしれません。

購入前に確認したいのは、需要・権利・道路・建物・設備・総費用・契約条件の7項目です。すべてを自分で判定する必要はありません。自分で気づく項目と、専門家に確認する項目を分けるために、チェックリストを使います。

内覧前に集める資料は「物件資料だけ」で終わらせない

不動産会社に、登記情報、公図、建物の図面、固定資産税関係の資料、修繕履歴など、提供可能な資料を確認します。資料がない場合は「ない」と記録してください。建物の現況と図面が一致しているか、増築などの経緯が分かるかも確認します。

資料がそろっていることと、問題がないことは別です。それぞれの資料がいつの情報か、何を確認できるのかを整理してから、現地と照合しましょう。

購入前の7項目チェックリスト

項目確認すること主な相談先
賃貸需要想定する入居者、家賃の根拠、競合物件地元の賃貸仲介会社
権利関係売主と名義、共有、担保権等の処理仲介会社・司法書士
道路・土地接道、境界、通行や工事に必要な権利自治体担当窓口・土地家屋調査士等
建物雨漏り跡、ひび、傾き、腐朽等の状況建築士・調査技術者
設備給排水、電気、ガス、給湯、浄化槽等設備業者・管理先
総費用取得、修繕、募集、保有中の支出仲介会社・工事業者等
契約条件引渡状態、残置物、責任範囲、支払日程仲介会社・必要に応じ専門家

「確認済み」の横には、確認した相手と日付、資料名も残します。口頭で聞いたことは、重要な内容ほど書面でも確かめます。「たぶん大丈夫」をチェック済みにしないことが、この表を使う一番の意味です。

建物は、気になる場所を写真と質問に変える

天井のしみ、窓まわりの変色、床の沈み、基礎のひびなどがあれば、場所と状態を撮影します。ただし、しみがあるから現在も雨漏りしている、ひびがあるから危険、と自分だけで決めつける必要はありません。逆に、きれいな内装だけで健全とも判断できません。

売主に「いつ気づいたか」「原因の調査や修理をしたか」「資料が残っているか」を確認し、調査や見積もりにつなげます。天井裏や床下など、自分で安全に入れない場所へ無理に入らないでください。

国土交通省が案内する建物状況調査は、既存住宅状況調査技術者が基準に基づいて行う調査です。依頼時には、調べる範囲、入れない場所、追加調査の要否を聞きましょう。調査を受けたことが、将来の不具合が一切ない保証になるわけではありません。

道路や土地は「今、使えている」だけで済ませない

車で出入りできることと、必要な権利や法的条件が整っていることは同じではありません。私道の扱い、給排水工事の際の掘削、境界や越境など、将来の工事や売却にも関係する点を確認します。

再建築や改修の可否も、広告の短い説明だけで判断しないこと。所在地や建物の状況、予定している工事を示して、自治体や建築士へ確認します。賃貸としての利用を予定していることも、最初に伝えておくと相談が具体的になります。

設備は、動くかどうかを確認できたかまで記録する

長く使われていない家では、水道や電気が止まっていて、内覧時に設備を試せないことがあります。「故障していない」と「未確認」は別です。通水・通電できる時期を相談し、確認できない部分は修理や交換の可能性を費用に織り込みます。

井戸、浄化槽、私設の配管などがある場合は、その仕組みと維持管理先、過去の点検資料も確認します。設備の名前が分からなければ、写真を持って専門業者に相談すれば構いません。

契約前には「誰が、どこまで対応するか」をそろえる

例えば残置物がある家なら、引渡しまでに売主が処分するのか、買主が引き受けるのかで予算が変わります。設備の不具合や、引渡し後に問題が分かった場合の扱いも、説明を受けて確認します。「現状のまま」という一言だけで、すべて理解したつもりにならないこと。気になる箇所と希望する条件を先に書き出し、契約書のどこに反映されるのかを聞いておきましょう。

買う・調べる・見送るの3段階で決める

チェック項目に不明点がある物件を、すべて排除する必要はありません。大切なのは、不明点を値段の安さで打ち消さないことです。

  • 次の判断へ進む:需要、必要工事、費用、契約条件の根拠がそろった。
  • 追加調査する:雨漏りの原因、設備、道路など、判断に必要な情報が足りない。
  • 見送る:解決方法や費用を見込めない、目的の利用が難しい、予算を超える。

最後に「購入後、最初に困りそうなことは何か」と自分へ質問してください。その答えに、対応先と予算が用意できているでしょうか。空き家を見る力は、傷をたくさん発見する力だけではありません。分からないことを分け、確認し、収支と合わせて判断する力です。