退去立会いでは、入居時の記録と現在の状態を照合する準備が大切です。現地で確認する事実と、その後に判断する修繕費の負担を分けて進めましょう。資料がそろっていると、記憶だけの話し合いを減らせます。

長く住んでもらった家ほど、当初の状態を細かく覚えているのは難しいものです。貸主も借主も、何年も前の傷をすべて覚えているわけではありません。立会いは、責任を急いで決める場ではなく、状態を一緒に確かめる場として準備します。

日程を決める前に、退去の手続きを確認する

解約の連絡を受けたら、契約の予告期間や退去予定日を確認します。立会い日時、荷物の搬出、鍵の返却、精算の連絡先も整理してください。

荷物が残っていると、床や壁を確認できない場所が生まれます。どの状態で立会いを行うかを事前に伝えます。すべての条件を口頭で済ませず、管理会社と借主が確認できる形にしておきましょう。

電気や水道などの扱いも、設備確認の方法と合わせて事前に調整します。無理な通電や無断の使用を前提にしないでください。

持参する資料を一つにまとめる

  • 賃貸借契約書と、原状回復などの特約。
  • 入居時のチェック表と写真。
  • 入居中の修繕・交換の記録。
  • 設備と付属品、鍵の一覧。
  • 今回の確認表と撮影できる機器。

入居中に交換した壁紙や設備があれば、最初の入居日だけでは経過年数を判断できません。工事記録も用意しておくと、後の確認が進みます。

資料がない箇所は、ないことを認識しておきます。記録不足を借主の説明だけで埋めるのではなく、分かる事実を整理しましょう。

当日は、場所を決めて順番に回る

玄関から各部屋、水回り、収納、屋外へと、一定の順番で確認します。傷や汚れがあれば、全体の位置が分かる写真と近くの写真を残します。

確認すること記録のポイント
傷や汚れ場所、範囲、入居時との違い
設備有無、確認できた動作、未確認部分
付属品鍵やリモコンの数
残っている物所有者と今後の扱いを確認

原因について意見が違う場合は、双方の説明を分けて記録します。「相手が認めない」といった評価より、何が確認でき、何が未確認かを残す方が役立ちます。

状態確認と、費用の合意を混ぜない

傷があることを確認しただけで、工事費全額を借主が負担するとは決まりません。国土交通省のガイドラインでは、通常損耗や経年変化、損傷の原因、経過年数などの考え方が示されています。

見積もり前に金額を断定したり、確認表への署名を全費用への同意として扱ったりしないようにします。何を確認した書面なのか、分かる形にしてください。

専門的な判断が必要な傷みは、業者の確認後に説明します。相手が理解していないまま、その場で結論を急ぐ必要はありません。

立会い後の予定を伝えて終える

見積もりの取得、負担区分の確認、精算の連絡は、誰がいつ行うかを伝えます。連絡先が変更になる場合は、必要な範囲で新しい窓口を確認します。

鍵の受領と本数、確認した範囲、未確定事項を残します。荷物が残る場合も、勝手に処分してよいと考えず、所有関係と適切な手続きを確認してください。

工事を早く始めたいときも、状態の記録を先に確保します。必要な証拠が残らないまま補修すると、後から説明しにくくなります。

前日に一度、資料を開いてみる

写真のフォルダが開けるか、どの部屋の記録か分かるか。現地へ行く前に確認しておきましょう。持っているだけでは、当日に使えないことがあります。

退去立会いの準備は、揉めるための準備ではありません。長く使ってもらった家の状態を確かめ、次の手続きへ進むための準備です。事実を丁寧に残すことから始めましょう。